電話ボックスをアップデートする

スタートアップ

スタートアップで事業を考える際に、市場セグメントをどのように区分するか、が一番重要な要素です。国内か海外か、B2CかB2Bか、展開するエリアや顧客属性によって市場セグメントは異なり、打ち手となる戦略や経営資源の種類も当然異なってきます。

市場セグメントの設定が明確になった後、考えるべきは、自社で全て展開をするか、他社とアライアンスを組んでウィンウィンの関係を築いていくか、という二つの戦術を吟味する必要があります。視点としては、事業のローンチを行う際に、どれだけ確実にスムーズに実行できるのか、という切り口です。

この記事を読んで欲しい人
  • 自力で商品開発をするべきか、提携を行って商品開発をするべきか、戦術が固まらないスタートアップ
  • 財務的な制約をいかに潜り抜けて商品開発を行うか、あたらめて検討する必要のある企業

リモートワーク用個室ボックスの事業展開

例えば、下記のようなケースを考えてみます。スタートアップのA社は、ソーシャルディスタンスが今後求められる中で、リモートワークの需要が今後ますます高まっていくと予想しているものの、自宅や会社といった場所を問わず働ける現在のシェアオフィスでは、そのニーズに応えられないのでは、という仮説を持っていたとします。

We Workといったシェアオフィスは、働く場所を提供しつつ、確かに様々な人が集まることで、予見できない繋がりやコネクションができて、お互い刺激し合うことで、新しいイノベーションが起こるという、副次的な付加価値を提供することで、成長してきました。しかし、ソーシャルディスタンスが求められる世の中にあっては、果たしてフィジカル(物理的)に集まることと、ビデオ会議などでデジタル空間上集まることとの違いがどれだけ、イノベーションのるつぼとしての役割に違いがあるのか、正直誰にも分からないところでしょう。逆にいえば、シェアオフィスは、期待感先行型のビジネスモデルであったと言えるかもしれません。

提携か単独開発か?

イノベーションの源泉が、デジタル上のビデオ会議でも成り立つとすれば、シェアオフィスは機能的に、空き時間にさっと仕事をできるスペース、それも密になりにくいスペース、がより求められていくことが分かります。

前述したA社は、この空き時間にさっと仕事ができるスペースを、従来のシェアオフィスとは異なるアプローチで生み出そうとし、ついに電話ボックス型の個室オフィスを全国で展開することを思いつきました。

もちろん既にJR東日本(駅ナカ×シェアオフィス)や不動産会社(三菱地所のテレキューブ)などが、先行して個室オフィスをJRの駅や不動産会社が保有する商業ビルに設置しており、A社としては、単独で資金調達を行い事業展開をしていくか、それとも個室オフィスに関心がある企業と提携して事業展開をするか、の二つの戦術で悩みを抱えるはずです。

財務負担を考える

ここで、A社は、個室ボックスの1から開発することの財務負担をの重さを考えました。恐らく数百~1千万円程度のコストがかかる個室ボックスを置く場所の賃料を払いながら展開していくには、相当の資金が必要だとの考えに至ったのです。

個室ボックスの1台の製造費用が500万円だとして、10台で5000万円、1台10万円の賃料だとすると月100万円のコストです。1時間500円の利用料金で、1台あたりの24時間の収益は最大1万2千円、稼働率を50%程度とすると1台6千円。そうすると月18万円×10台で180万円の売上高となります。税引前の売上総利益は80万円(月)とすると、5000万円回収までは5年超となります。いまの仮定は、純粋に個室ボックスの設置までのハードアセットの費用を計算しただけで、人件費、予約システム、メンテナンス費等は考慮に入れていません。よって、現実的なペイバックピリオド(回収期間)はもっと長くなるでしょう。

体力に限りがあるスタートアップにとっては、財務的に苦しい戦いとなってしまいます。

電話ボックスを活用するという発想

単独展開は難しそうです。発想を変え、提携戦略を考えます。思いつくのが、既に遊休不動産を持っている不動産会社ですね。しかし、既に展開しているとは前述の通りです。

他にないかと考えていくと、電話ボックスがあるのではと気づきます。一時期よりは減ったとはいえ、電話ボックスは日本中に未だ15万台程度存在しています。電話ボックスをアップデートして、個室ボックス、Wi-Fi、充電、通話ができる拠点へと変えられないでしょうか?わざわざ置いてあるものを回収することに比べたら、財務力のあるNTTと一緒に電話ボックスのアップデートをして、リモートワーク用の個室ボックスに変えていくというアイディアは面白いと思いませんか。

まとめ
  • 市場セグメントが決まったら、市場の攻め方(戦術)を検討する
  • 戦術には、財務面の制約条件を織り込む
  • 単独展開でなく、財務的な余力のある大手企業とのタイアップも効果的
  • 電話ボックスのアップデートは、リモートワーク時代の面白いアイディア
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